ヨガを授業に取り入れる現場の声は?
太田さんが数年前からヨガ指導を行なっている、東久留米市久留米中学校。編集部が斎藤校長先生にインタビューすることができました。
−ヨガを体育に取り入れることになったきっかけは何だったのでしょうか?
斎藤校長先生(以下,校長):太田先生がスクールカウンセラーで勤務していて、PTA向けに、ヨガを基にした教育相談の講座をやっていたので、そこでヨガを知ったんです。ちょうど、東京都が進める【オリパラ教育】のひとつに、スポーツに対する啓発や体力向上のための取り組みが行われていて、本校がその施策のスーパーアクティブスクールとして研究対象に選ばれていたんです。その中で運動が好きでない子どもをどうするか、身体をほぐすためにはどうするかという課題があり、ヨガがいいんじゃないかということで太田先生にお願いしたのが始まりです。今は保健体育の学習指導要領の中で、身体ほぐしという項目に該当すると判断し、体育の授業の中で行なっています。
−体育の授業の中で、ヨガはだいぶ新ジャンル?生徒さんの反応はどうですか?
校長:そうですね。年に1回体育の授業でヨガをやる以外に、【朝ヨガ】といって、朝読書の時間の前後に3分くらいの間で、太田先生の録音した音声を校内放送で流し、毎日ヨガをする時間を作りました。子ども達の姿勢が悪いので、私自身としてはいい取り組みだと思っています。ヨガに対する反応としては様々です。「楽しい!」という声も多いですが、中にはあまり好きじゃない子もいるようです。今はコロナの影響でなかなかヨガの時間の確保が難しいですが、来年からはまた復活できたらと思っています。普段やらない深い呼吸をすることで、精神的な落ち着き、自分を見つめる、背筋を伸ばす、姿勢を良くする、っていう非日常を体感することが大事だと思います。多様な特徴のある子どもたちが多い中で対応を工夫すること、生徒指導も改めて見直すことを積み重ねてきました。そこでヨガのほかにも、生徒たちへの接し方、指導のしかたを色々と工夫していきました。そうしていったら、最近は落ち着いています。
−ヨガの効果だとしたらすばらしいですね!他の学校にも広まっていったら良いと思いますか?
校長:そうですね。広まっていくと良いと思います。一方で、教育課程の学習指導要領で、どこにヨガを位置付けるかや、資金、指導者をどうするかなどの問題はあります。ただ、取り組み自体はとても面白いと思っています。太田さんはやりたくない子たちに対して「やらなくていいよ」というから良いですよね。選択を残すことは大事。やらないという選択肢もあるようにしたいですね。朝読書の時間はもともと生徒たちを落ち着かせるという目的で行っていたので、それをうちの学校では朝ヨガとして文化にしていけたらと思います。
ヨガの授業の後に、体育担当の先生にもヨガの感想を伺いました。
−ヨガを授業内に取り入れてる学校ってないと思うんですが、最初の印象はどうでした?
先生:そうですね、意外と生徒たちがちゃんとやるんだなと思いました。こういうのは男子の反応がどうかなと思っていましたが、結構楽しんでやっています。体育の中でラジオ体操を集団演技としてやると、ポーズを綺麗にするっていう意識が働くと思うんですが、ヨガって綺麗さは求められないっていうのもおもしろいなと思います。
−ヨガの授業の良い点や改善点など、感想を教えてください。
先生:生徒たちが気持ちよさそうに、「やってよかった」って言ってるのを見るといいなと思います。いつもはうるさい生徒たちが落ち着いていたりとか。もっと良くしたいのは学校の環境ですかね。畳の色とか、カーテンがビリビリなのはもっと良くしたいなって(笑)。外の音、あとはヨガに良さそうな音楽があれば使うとか。心地よい環境を作ると気持ちも変わると思うので。ただ、ヨガを授業としてやってしまうと、評価をつけないといけなくなるので、それはヨガの目的に反するかなとか。なので授業としてではなくて、朝ヨガなどで取り組むのが今の段階では現実的なのかなと思います。